15:20-16:00
40分
世界はAIの開発に年間数千億ドルを投じる一方、それを受け止める社会の備えにはほとんど投資していません。しかし歴史を振り返れば、鉄道、トランジスタ、品質管理から最も大きな果実を得たのは、それを発明した国とは限らず、最もうまく受け止めた国でした。明治と戦後の日本がその証です。私はこの見過ごされてきた仕事を「リバース・アラインメント」と呼んでいます。AIを社会に合わせるだけでなく、社会の側をAIの時代に向けて整えることです。それは、シビックテックの皆さんが、この言葉が生まれるずっと前から取り組んできたことにほかなりません。本講演では、Code for Japanのコミュニティが先導できる四つの課題を紹介します。一つ目は、実際に身につけた技能を記録する資格の仕組みです。二つ目は、人と人の紹介のように働く、AIエージェント同士の信頼です。三つ目は、地域から職能まで、それぞれの共同体に応えるAIです。四つ目は、モデルを育てる知恵を持つ人々への公正な対価と、何が役立ったかという手応えです。日本がAIの時代を導くために、開発競争に勝つ必要はありません。誰よりもうまく受け止めればよいのです。そしてそれは、人にしかできない仕事です。
Speaker

the Microsoft Research Plural Technology Collaboratory, RadicalxChange Foundation, Faith Family and Technology Network and Plurality Institute
共同創設者兼リーダー
E. グレン・ウェイル(衛谷倫、エタニ・リン)は、2007年にプリンストン大学を首席で卒業し、2008年に同大学で経済学の博士号を取得した。ハーバード・ソサエティ・オブ・フェローズのジュニア・フェロー、およびシカゴ大学経済学部の助教授を務めた後、現在はマイクロソフトリサーチの「Plural Technology Collaboratory」の創設者兼研究責任者を務めた。集団決定において個人の選好の強さを反映するメカニズムである「二次投票(Quadratic Voting)」の共同発明者として知られ、2018年には、エリック・ポズナーと共著で『Radical Markets』を出版し、同書は『エコノミスト』誌の「年間ベストブック」の一つに選ばれた。2024年には、オードリー・タンおよび「Plurality」コミュニティと共著で『Plurality』を出版し、その日本語版は2025年に刊行された。

慶應義塾大学 KGRI プルーラリティ・なめらかな社会研究センター デジタル民主主義推進機構
特任教授 代表理事
1998年慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主任研究員、東京財団仮想制度研究所フェローを経て、2012年にスマートニュース株式会社を共同創業。著書に、『なめらかな社会とその敵』(勁草書房より単行本、筑摩書房より文庫本) など。専門は複雑系科学、自然哲学。